神奈川で生まれ育ったわたしにとって、富山県は縁遠い場所。金沢へは子どもの頃に家族旅行で訪れたことがありました。あ、我が息子が小さな恐竜男子だったころ、福井県の恐竜博物館にも行きました。
遠い、というよりも、通り過ぎる場所だったのかもしれません。
息子も思春期に突入し、仕事もフリーとなった今、高岡のまちをゆっくりと歩いて、鋳物づくり体験を楽しむ、なんて旅行がいよいよできるようになりました。
いつか高岡市を訪れる、そのときのために、
ものづくりのまち高岡について、くわしく調べてみることにしました。
江戸時代から続く鋳物づくり
富山県高岡市は「高岡鋳物」の発祥のまちです。
以前購入した干支の置き物「ミニ干支シリーズ」の大寺幸八郎商店さんも高岡市の金屋町に店舗も構えています。
まちの歴史は、約400年前にさかのぼります。高岡は戦国時代の武将、前田利長公によって開町されました。利長は城下の繁栄を目的として、砺波郡西部金屋(現在の高岡市戸出)から7人の鋳物師(いもじ)を招き、さらに彼らに拝領地を与えます。これを契機として、高岡での鋳物産業は大きな発展を遂げたのだそうです。
鋳物とは、高温に熱して液状になった金属を型の空洞部に流し込み、冷ましたのちに型から取り出して成形したもの。高岡では、当初、農機具などの鉄鋳物が主力でしたが、次第に加工性の高い銅鋳物が生産されるようになったそうです。銅を使うことで複雑で繊細な表現が可能になり、数多くの優れた美術品や仏具が生みだされました。それに伴って装飾の技術が高まり、象嵌、螺鈿、彫金などの加飾技法も発展したといわれています。
この高岡銅器を象徴するもの、なんだと思いますか?
それは「高岡大仏」なのだそうです。
現在見ることのできる高岡大仏は三代目で、1933年に再建されました。初代は鎌倉時代に源義勝が二上山麓に造立した、高さ約5mの木造大仏であったといわれています。続く二代目は、1609年、加賀藩2代藩主前田利長公が現在の場所に再建した高岡大仏。しかし、1900年に火災で焼失してしまいます。そして33年の時を経て造立されたのが、現在の高岡大仏。火に強い銅製で、鋳造から着色までの全工程は高岡で行われたそうです。まさに鋳造技術の結晶であり、高岡の象徴とされるのもうなずけますね。
このような歴史ある高岡銅器ですが、その文化・伝統は、金屋町の風情豊かな街並みにも残されています。
高岡銅器の発祥の地である金屋町は、伝統的な町屋が軒を連ねています。間口が狭く、奥行きのある敷地に主屋、中庭、土蔵、作業場などが配され、「サマノコ(狭間の格子)」とよばれる格子を設けているのが特徴。敷地内の配置は防火対策によるものであり、建物の構造には豪雪に耐えうる工夫も施されているそう。金屋町の街並みは美しいだけでなく、鋳物師(いもじ)の町にふさわしい意匠や機能性を備えているのですね。
ここまで高岡市、特に金屋町について調べてみましたが、高岡市の文化や歴史を伝える文化創造都市高岡HPは、おしゃれで楽しくて分かりやすい! 訪れるときはまた参考にしたいと思います。
高岡銅器ができるまで
わたしは高岡市を訪れたことはないのですが、実は都内で鋳物スプーンづくりのワークショップに参加したことがあります。高岡のつくり手さんから譲り受けたという道具一式を使い、錫を鋳型に流し込んで小さなスプーンをつくるワークショップです。本格的な鋳物づくりが気軽に体験できて、とっても楽しい!
このワークショップを主催しているのは東京・神楽坂にある「にっぽん てならい堂」。つくり手さんから直接教われる、さまざまなワークショップを開催されていますよ。
と、話がそれてしまいました。
本題の高岡銅器について。
伝統的工芸品にも指定されている高岡銅器のつくり方とはどのような特徴があるのでしょうか。
伝統的な鋳造法には以下の4つがあるそうです。
高岡銅器振興協同組合のホームページに詳しい説明や画像、動画がアップされているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
- 双型(そうがた)鋳造法1
おもに火鉢や茶釜、梵鐘などの円筒形・円錐形で、断面が左右対称のものに用いられる技法。
断面を写しとった板状の原型を回転させ、外側の鋳型をつくる。
- 焼型(やきがた)鋳造法2
小物から銅像までさまざまな製品に用いられる技法。
粘土と和紙の繊維を調合した「真土(まね)」という素材で鋳型をつくる。
- 蝋型(ろうがた)鋳造法3
複雑で繊細なデザインに適した、もっとも精度の高い技法。
蜜蝋や木蝋に松脂を煮合わせたもので製品の原型をつくり、土に包んでその原型を焼く。蝋が溶けてできた空洞部分に金属を流し込む。
- 生型(なまがた)鋳造法4
鋳物砂という素材を固めて鋳型をつくる技法。鋳型を焼成する必要がないので「生型」と呼ばれている。
枠の中に原型を入れ、その上に鋳物砂を押し固める。鋳物砂が固まったところで原型を外し、その空洞に金属を流し込む。
【参考ページ】
・末広開発株式会社 まちづくり事業部
・文化創造都市高岡HP
・伝統工芸高岡銅器振興協同組合
・高岡市公式HP|高岡市歴史的風致維持向上計画書